内容証明を利用すべき場合とすべきで無い場合

 内容証明のメリットデメリットはご理解いただけましたでしょうか。

 内容証明を利用すべき場合というのは、メリットを発揮できる場合ということになりますが、この観点から内容証明を利用すべき場合と利用すべきで無い場合をご説明します。

 

内容証明を利用すべき場合

1 債権譲渡を債務者に通知するとき

2 契約を解除するとき

3 期限の利益を喪失させるとき

4 時効を中断させるとき

5 クーリングオフをするとき

6 訴訟の提起を考えているとき

 

利用すべきで無い場合

1 訴訟に持ち込みたくないとき

2 相手方に誠意があるとき

3 当方に非があるとき

4 今後も親しく付き合いたいとき

5 相手方が倒産しそうなとき

6 相手方が財産隠しをしそうなとき

 

では、簡単ですがひとつひとつ説明していきましょう。

 

内容証明を利用すべき場合

 債権譲渡を債務者に通知するとき

 債権を譲渡するときは、原則として、債務者に対して通知を送るか債務者の承諾を得る必要があります。

 

民法では以下のような規定があります。

(指名債権の譲渡の対抗要件)

第467条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務所に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ債務者その他の第三者に対応することができない。

2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ債務者以外の第三者に対抗することはできない。

 
確定日付のある証書とは公証人役場で日付のある印章を押してもらった証書なども該当しますが、一般的には内容証明郵便を意味しています。そのため、債権譲渡通知を行うときには、一般的に内容証明で行うこととされています。
 また、債権譲渡通知ではその通知の到達した日が債権の貴族の優劣を決める重要な役割を果たすことになります。配達日の証明という意味においても債権譲渡通知を行う場合には内容証明を利用すべきです。
 
契約を解除するとき
 当事者間の契約を解除するときには通常内容証明が用いられます。
これは契約の解除が重要な法的効果を果たすことと、契約の解除の効果をめぐり紛争が勃発する可能性が高いことを理由としています。
 
期限の利益を喪失させるとき
 期限の利益とは、期限が付されることによって当事者が受ける利益のことを意味しますが、一般的には一括払いでなく分割払いが認められていることによる債務者側のメリットを意味します。
 例えば100万円を来月末に一括払いしなければならない場合と、来月末から毎月月末に10万円ずつ10回払いすればよい場合とでは後者のほうが資金繰りに余裕ができます。この分割払いにより得られる利益のことを法律用語では期限の利益と呼んでいます。
 
 期限の利益を設ける場合には「その支払いを怠り、通知による請求がなされても支払わない場合」などには期限の利益を喪失する内容の規定をあわせて設けることが多く見受けられます。
 
 このような場合、通知がなされたかどうかが争いになることも考えられます。期限の利益を喪失させる通知を送ったことの立証責任は債権者側にあると考えられています。債務者側に通知は受け取っていないなどと反論されてしまうと債権者としては非常に苦しい立場になるわけです。
 
時効を中断させるとき
 時効の中断とは。進行中の時効期間がある事由により時効期間が止まることを意味します。
 
クーリングオフをするとき
 訪問販売などでは、一定の期間内であれば違約金などの請求を受けることなく、一方的な意思表示のみで申し込みの撤回や契約の解除ができるいわゆるクーリングオフという制度が認められています。
 この制度を利用するためには、原則として書面により契約の通知を行わなければならないとされています。
 クーリングオフも一種の契約解除ですので契約を解除する場合と同様、内容証明で通知を送るべきです。
 
訴訟の提起を考えているとき
 相手に心理的プレッシャーを与えることを主目的として内容証明を利用する場合もあります。
 一般的に内容証明は通常の取引形態から逸脱し、紛争に突入したことを相手に示す効果があります。内容証明の最後の方に「お支払いいただけない場合には法的手段に移行しますのでその旨ご了承ください。」などと記載する場合がありますが、応じなければ出るところに出手もらうよ、という意思表示をするのが内容証明というものです。
 
内容証明を利用すべきで無い場合
訴訟に持ち込みたくないとき
 内容証明を使用するとトラブルが訴訟に持ち越される可能性が高くなります。訴訟にはかなりの時間と労力、そして費用がかかります。現在抱えているトラブルを訴訟にまで発展させたくない場合には内容証明を出さないほうが良いかもしれません。(特に弁護士にお願いする場合)
 
相手方に誠意があるとき
 相手方が本当に経済的に困窮しており、余力の範囲内で誠意を持って対応している場合には内容証明は出さないほうが良いかもしれません。
 もっともうわべだけ誠意のある振りをしているということも有りますので見極めも必要です。
 
あなたに非があるとき
 内容証明は蒼手に対して強い反発姿勢を示す手段となります。ですから、あなたに非があるときはさらに事態がこじれることも考えられます。
 
今後も親しく付き合いたいとき
 今後も親しく付き合いたい相手には、内容証明を送らないほうが良いでしょう。訴訟も覚悟のうえという相手や段階で出すべきと思います。
 
相手が倒産しそうなとき
 相手が内容証明を見て再建を断念し、破産手続きなどに入ったら回収はできなくなります。こういう場合は、安易に内容証明を送らず、早期に最大限の回収を図る手段を検討すべきでしょう。
 
相手が財産隠しをしそうなとき
 預金などは一度別の鋼材口座に隠されてしまうと、その後発見することは難しい場合が多くなります。この様な場合には、通常仮差押という裁判手続きを行います。